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契機は震災でした

1960年半ば、宮城県の海沿いに位置する女川町で水産加工・倉庫業を営む家に生まれる。
青年時代は東京・築地にあった東京中央卸売市場で荷主と仲買人を繋ぐ大卸業務に従事、
その後宮城へ戻り水産関連の組合で貿易の仕事に約20年携わってきました。

2011年、東日本大震災。
変わり果てた光景に震え、昨日までの日常が遠く思えました。
もう復興なんて無理なのではないかと…

でもすべてなくしたところから立ち上がる水産業の底力を
目の当たりにしたときに「俺もやれるんじゃないか」と思ったのです、
既に48歳になっていました。

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必要なのは付加価値

世界三大漁場の一角をなす三陸沖がすぐそばにありながら、
いいものや希少なものはこぞって東京へいってしまう、
地元の人間としてそれが残念で少し悔しかった、
ならば自分でいい魚を仕入れ、付加価値をつけて三陸から全国へ送り出そうと考えました。

流通に携わる中で、地方で揚がる魚が東京や京都の老舗割烹店で
最高級の西京漬けの材料になるのを自分の目で見てきましたから、
必ずいいものをつくれると信じて、
試行錯誤を重ね長い時間がかかりましたがここに吟醤漬が誕生しました。

いま、やっと地元宮城で、自分の手でおいしくしてお客様に直接届ける夢が叶いました。

近年の気候変動で漁場も魚も変化し、人間は自然には抗えない。
「おいしい魚を食べる」から「魚をおいしく食べる」ことを、
これからも伝え続けていきたいと思っています。

魚隆商店 店主

※文章の一部は2021年12月3日河北新報オンラインニュースへの掲載記事から抜粋しています

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